古来より木造建築の文化を持つ日本では、木材の耐久性を高めたり美観を高める方法として、堅牢で美しい光沢を放つ漆や、木材に浸透させ保護するために柿渋や桐油などに顔料を加えたものが古くから使われてきました。
その後、ペンキと呼ばれる塗料が使用されるようになったのは、幕末から明治時代にかけてイギリスから輸入されるようになったことが始まりと言われています。
さて、近代に使われてきた塗料は、昭和に入って、石油化学技術の発達により開発された合成樹脂塗料で、この合成樹脂の開発も戦後にはアルキド樹脂、アクリル樹脂、更にウレタン、
シリコンからフッ素樹脂と高耐久化の開発が進みました。また、顔料や添加剤の発達により、特殊な機能に秀でた、防カビ塗料、抗菌塗料、遮熱塗料など、また質感やデザイン性の要望から意匠性重視の塗料が開発されました。
こうした耐久性や機能、意匠性の豊かさで格段に優れた塗料が登場するにつれ、漆や渋柿などの塗料は姿を隠すことになったのです。
いったい塗料とはどのような成分から成り立ち、どのように塗装された対象物を守っているのでしょうか。
塗料は、塗装工程を経て硬化し塗膜となりますが、この塗料の成分は、対象物を保護する成分と、乾燥、硬化するにあたって揮発する成分に分ける事が出来ます。
そして、塗膜成分は、
■保護機能を司る「合成樹脂」
■塗膜の色彩と艶を司る「顔料」
■塗料が均一な塗膜となる役割や塗膜に特別な機能を
持たせるための「添加剤」
の3つの成分から成り立ちます。
揮発する成分は、溶剤系塗料の場合はシンナーと呼ばれる有機溶剤がそれに当たり、水性反応型塗料の場合は水になり、樹脂を液状に溶かして塗れるようにするはたらきをします。
ご質問の多い部分なので、住宅の外壁塗装や屋根塗装で使用される塗料についてご説明させていただきます。
塗膜の耐久性は、その塗料の保護機能をつかさどる「合成樹脂」により決定され、その種類により下記のように分類及びランク付けされます。
【樹脂による分類】
■アルキド樹脂塗料 ●耐久年数:3~5年程度
昔から、いわゆる「ペンキ」と呼ばれる塗料のことで、ホームセンターで鉄部用や木部用の塗料として市販されているDIY向け塗料のことです。
価格は安いのですが、耐久年数が短いので、現在では屋根はもとより外壁で使用されることも非常に少なくなっています。
■アクリル樹脂塗料 ●耐久年数:5~6年程度
新築時の住宅では、ほとんどがこの塗料で塗装されていますが、耐久年数が短いため、塗替え時の使用頻度は圧倒的に少なくなります。
塗替えの場合は、店舗など美観を重視し、頻繁に塗り替えることが予想されている場合には、コストパフォーマンスの高い塗料といえます。
■ウレタン樹脂塗料 ●耐久年数:8~10年程度
耐久年数が10年程度と比較的長期に及ぶため、つい一昔前までは、屋根及び外壁の塗替え用の高耐久塗料としてもっとも普及していた塗料といえます。
ウレタン樹脂塗料の中でも、溶剤型で二液反応型のウレタン樹脂塗料は、後で紹介するシリコン樹脂塗料の中でも水性シリコン樹脂塗料や溶剤型の一液型シリコン樹脂塗料よりも耐久性が高く、外装用として使用される頻度が高い塗料です。
■シリコン樹脂塗料 ●耐久年数:10~12年程度
(2008年)現在、耐久性と材料価格のバランスが非常に良い塗料といえ、住宅の屋根・
外壁の塗替え用としてもっとも普及している塗料です。
■フッ素樹脂塗料 ●耐久年数:15~20年程度
建築用の塗料の中では最も耐久性の高い塗料といえますが、それに伴い価格的にも高価で、頻繁に塗替えることができない耐久性の要求されるビルや橋梁の塗装に使用されることが多い塗料です。
最近では住宅にも使用される機会が増えてきましたが、木造住宅では10年前後に下地の劣化が起きることが多いので、この場合、費用と効果の視点から「お勧め」とは必ずしもいえない場合があります。
(木造住宅で外壁にモルタルやサイディング材を使用している場合、フッ素樹脂塗料のように耐久性が15年以上とうたわれている塗料で塗り替えを行ったとしても、必ずしも15年間メンテナンスいらずという訳にはいかず、10年程度でひび割れ(クラック)やシーリングに亀裂が発生する場合が多いので、10年に一度、下地処理からのメンテナンスを必要とする場合が多くなります。
この場合、価格と品質とのバランスからフッ素樹脂塗料よりもシリコン樹脂塗料の方が、お勧めの塗料と言うことが出来ます。)
【希釈材による分類】
各種樹脂塗料は希釈材により、水性○○樹脂塗料、溶剤系○○樹脂塗料に分けることができ、さらに溶剤系○○樹脂塗料は一液型○○樹脂塗料、二液方○○樹脂塗料に分類することができます。
例えばシリコン樹脂塗料は、下記のように分類されます。
水性系、溶剤系ともに長所・短所があり、一概に「こちらが良い」とは言えません。
水性が厚膜でやわらかい塗膜を形成するのに対し、溶剤系は薄膜で硬い塗膜を形成することから、水性は下地に対し柔軟に追従することが長所となりますが、汚れが着きやすいという欠点があります。
また、溶剤系は、水性と比べると汚れも付き難く総合的には耐久性も強いと言えますが、下地の動きに対し追従できず、ひび割れが入りやすいと言う欠点があります。
そして溶剤系は作業時における臭気の問題もあり、住宅地などでは近隣のご理解も必要な場合がありますし、マクロ的な視点から見ますと、地球温暖化など環境問題の視点からは優れた製品とは言い切れません。